診療について
尿管が何らかの原因により詰まり、腎臓に尿が停滞し腫れている状態(水腎、水尿管症)になっているとき、これを放置した場合、腎盂腎炎など腎臓の炎症が起こり熱がでたり、ひどい場合は、そこからバイ菌が全身に回り、いわゆる敗血症といわれる重篤な状態に陥ることがあります。また、この状態が長期間継続した場合は、腎臓機能そのものが失われ、最後には萎縮してしまいます。このため、早急に腎臓に停滞している尿を体外に出す必要性があります。以下二通りの処置方法があります。
方法としては腰から腎臓を超音波で観察しながら針を刺し、それを太くしていき、最終的に体外へ尿を直接だすチューブを挿入します。これを腎瘻造設術といいます。この処置は局所麻酔下に行います。腎臓は、全身の血液を濾し取ってやり尿を生成するところなので、当然、血流が豊富であり、これを刺して尿を体外へだすチューブを留置するわけですから、腎臓からの出血(血尿)がしばらく続くことがあります。また稀ですが、針で直接腎臓のまわりの血管を刺してしまうこともあります。もし、出血が継続する場合は止血のための処置を行うことがあります。また、体外から異物が入るわけですから、高熱が出ることがあります。このため抗生物質を投与します。この処置の後には、直接、尿を腎臓から出すためのチューブが腰から出ています。必ずチューブには気をつけて引っ張ったりしないようにしてください。(抜けてしまったり折れ曲がってつまることがあります。)また、処置してから1週間はお風呂を控えて下さい。(処置翌日からは体を拭いたり、専用のフィルムシートをはってのシャワーは構いません。)
膀胱鏡を挿入し尿管の膀胱への出口(尿管口)から尿の流れとは逆向きに腎臓に向かって細いワイヤーを挿入し、これに添わせて尿管ステントを挿入して、腎臓と膀胱の間に一時的にバイパスを作ります。
男性はお尻の尾骨周辺から仙骨硬膜外麻酔を行い、女性はゼリー麻酔を行います。麻酔を行った後には太股の内側がしびれた感じがあり、よく効いている場合、特に階段を下りられる際など、突然、力の抜けた状態になって転倒することがあります。この状態は1時間程度でおさまります。また稀ですが、気分不良や血圧の一時的な低下を伴うこともあり、この際は検査を中断し点滴など、必要な処置を行います。膀胱鏡やステントを留置したことによる合併症としては、体外から異物がはいるわけで、高熱が出ることがあり、このため抗生物質を2~3日内服していただくことになります。また、尿管の狭窄部をうまくガイドワイヤーが通過すればよいのですが、通過しない場合や一時的に尿管に傷がつく可能性もあります。この場合は尿管ステント留置を断念し腎瘻といって腎臓に直接管を挿入し、腎臓に停滞した尿を体外へ出してやる方法にすぐに切り替えることもあります。
検査当日のお風呂はやめてください。また、膀胱内での操作や尿管に管を入れるため、血尿が続くことがあります。よく水分をとって尿を出すようにして下さい。また、管が血の固まりなどでつまることや管が腎臓から落ちてしまうこともあるため、帰宅後、腰痛や高い熱が継続するようなことがあった場合は病院まで御連絡ください。
尿中の細菌検査のために、清潔な尿を採取する目的と排尿障害により残尿がある時などに膀胱内の尿を排泄する目的で行います。尿道口より膀胱内にカテーテルという管を挿入し、尿を排泄します。
血尿や尿が濁っている時、また、浮遊物などで尿閉をきたすおそれのあるときに行います。注射器に生理食塩水を吸い上げ、カテーテルを通して膀胱内に注入します。その後、膀胱内の生理食塩水を排出します。
尿道がなんらかの原因により狭くなっている際に狭くなったところを拡げるために行います。処置後、排尿時痛や血尿がありますが、1日程度で消失します。
腎臓の限局性もしくはびまん性病変に対して、患側の腎全体を摘出する術式です。腎臓のみを摘出する単純腎摘除術と腎臓および腎周囲組織を摘除する根治的腎摘除術に分けられます。合併症としては、術中の剥離操作による周辺臓器(腹膜、胸膜、消化管、肝臓、膵臓、脾臓、血管、リンパ管)の損傷や、術後の出血、リンパ漏、無気肺、癒着性イレウスなどが起こる可能性があります。また、対側腎にもともと機能低下が見られる場合には、腎不全が顕在化することもあります。
腎盂尿管移行部狭窄症による水腎症に対する最も標準的な外科的治療法です。水腎症による背部痛、腎機能障害を伴う場合は手術適応を考えます。
主に膀胱がんに対して行われます。膀胱を温存して治療することが不可能と判断された場合に、根治を目的として施行されます。合併症としては、膀胱を摘出する際の直腸損傷、通常の術式では隣接する神経を温存しないために、インポテンスになります。
膀胱や尿管を取り除いた後や、腎臓が正常に機能しなくなった場合に、腎臓から送られてきた尿を体外に出すための尿路をつくる手術です。
前立腺全摘除術は、早期の前立腺癌の根治目的で行います。前立腺と精嚢を切除し、膀胱と尿道をつなぎ合わせる手術です。全身状態が良好で、余命が10年以上見込める患者さんに行うべきと考えられています。
正常男児では出生時に精巣は陰嚢内に下降しているが、何らかの原因で下降経路の途中で精巣が留まった状態を停留精巣といいます。1歳を過ぎても陰嚢内に精巣が下降していない場合は、精巣を下方に降ろすための精巣固定術の適応となります。
外科領域で最初に鏡視下手術が行われたのは、1987年フランスで施行された胆?結石症に対する腹腔鏡下胆?摘出術でした。それから20年が経過し、現在では症例にもよりますが、ほとんどの胆石の手術が鏡視下で行われるようになっています。
泌尿器科領域でも1992年以降、鏡視下の手術が行われるようになり、現在では腹腔鏡もしくは後腹膜鏡下の副腎摘出術、腎摘出術、腎尿完全摘出術などは一般的な手術の術式として確立しています。開腹手術に比べ、術後の侵襲、回復具合、入院期間の短縮などの恩恵をもたらします。
しかし、進行している癌や、難しい手術症例などは開腹手術を行っています。やはり、手術前の適切な判断、プランニングなどが大きな鍵となります。3D-CTなどによる臓器の位置関係、血管の走行など、個人個人の解剖を理解した上でプランを立て、開腹した方がよいのか鏡視下手術のほうがよいのかを決定することが重要です。また、鏡視下手術においても予期せぬ出血などがないとは言えず、やはりそのときの適切な判断で手術続行もしくは、開腹術への移行を決めなくてはなりません。
当院では平成18年度より積極的に腎摘出術、腎尿完全摘出術、腎部分切除を鏡視下で行っております。(現在当院では、前立腺全摘出術に関しては開腹手術しか行っていません。)また、最新鋭のハイビジョン鏡視下手術システムを導入し積極的に患者さんにとって侵襲の少ない手術をと考えております。それぞれの疾患についての御質問などありましたらご相談ください。
一般のテレビにおいても現在、地上波デジタル放送が開始され、その画質の良さが実感される機会があると思われます。さらにデジタル画像からハイビジョン映像に切り替えた際、より高精細な画像に驚かれることもあるかと考えます。医療用画像モニターの世界でも同様に現在、ハイビジョン高精細画像による鏡視下手術が行われるようになりました。このハイビジョンHDTV1080i方式は従来の2倍の走査線を有することで、細部までより明確に表示することが可能であり、高画質なハイビジョン画像をDegital to degutalモニターに表示させることができるため、従来の鏡視下手術システムに比べより安全で細かい手術操作が可能となりました。当病院でも本年3月よりハイビジョン鏡視下手術を導入し、より安全な、より繊細な手術を行っております。
経尿道的に切除鏡を挿入し、内視鏡下に高周波電流を用いた切除ループで前立腺を切除する方法です。排尿障害の強い中など度以上の大きさの前立腺肥大症が適応となり、皮膚切開もなく前立腺肥大症の手術の標準的術式となっています。利点は、根治的手術であること、患者さんの状態を見ながら手術を途中で中止できることなどが挙げられます。合併症としてTUR反応、皮膜穿孔、出血などがあります。術後には尿失禁、逆行性射精、尿道狭窄などもあります。
表在性膀胱がんに対して経尿道的に行われる内視鏡下の手術です。表在性膀胱がんでは第一選択として行われます。悪性腫瘍に対する手術であり、腫瘍の取り残しは許されず、高度なテクニックを要します。術中の合併症として穿孔や出血があります。
膀胱結石には、尿管結石が膀胱内に下降した後、尿道から排石されない場合と、膀胱内で結石が認められる場合とがあります。経尿道的に異物用膀胱鏡を挿入して、内視鏡下に膀胱内にある結石を鉗子で結石を除去する方法です。