診療について
栄養科 管理栄養士・腎臓病療養指導士 桝田裕子
吉矢医師から2021年7月号のコラムに慢性腎臓病の食事について掲載があったように、保存期CKDの食事療法は、たんぱく質と塩分とカリウムを制限しながらエネルギーを十分に摂る必要があります。今回は低たんぱく食をなぜ行わないといけないのかお話しさせていただきます。
私たちは、食事から3大栄養素(炭水化物・脂質・たんぱく質)を摂取しており、図1のように炭水化物と脂質は体を動かすエネルギーとして使われた後、 水(汗・尿)や二酸化炭素(呼吸)となり体外へ出ていきます。
たんぱく質は、窒素が入っており、主に体たんぱく(筋肉や内臓、ホルモンや抗体)合成に使われます。しかし、過剰にたんぱく質を摂取するとアミノ酸に分解されるため、尿素窒素などの老廃物(尿毒症物質)が増えてしまい、最終的に腎臓が処理しています。
腎臓がどれくらい機能しているかを示すものとしてeGFR(推算糸球体濾過量)があります。90以上が正常、15未満が末期腎不全です。腎機能(eGFR)低下のイメージを図2のように従業員に例えてみます。
例えば、たんぱく質を90g食べたとします。
①腎機能が正常(eGFR90)時、90人でたんぱく質90g分の老廃物の処理を行っていました。
しかし腎機能がeGFR30に低下した場合、
②30人の従業員でたんぱく質90g分の老廃物の処理を行わなければならず、正常時の3倍働かないといけなくなり過労状態です。過労を続けると、最終的には③のように従業員が更に減ってしまい、透析に至ります。
そのため、②の状態で、30人の従業員(腎臓)に負担をかけないよう、老廃物のもとである、たんぱく質の摂取量を控えることが必要となるのです。 しかし、単純に食べる量を減らすとエネルギー不足となり、自己流は大変危険です。
低たんぱく特殊食品は、
(A)たんぱく質を低下させながらエネルギーは通常食品と同等もしくは強化した食品と、
(B)不足しやすいエネルギーを補う製品があります。
(A)-1 たんぱく調整食品
通常食品を処理し蛋白質を50%以下に調せいしている食品で、自然食品に準じるため、食感・味覚が優れています。低たんぱくご飯やパンなど様々な商品が販売されています。
A)-2 でんぷん製品
でんぷん粉末を原料とし、たんぱく質をほぼ0に抑えた食品で、ホットケーキミックス・薄力粉・もち・麺類など種類が豊富です。血糖値がゆるやかに上昇するなどの特徴があり、糖尿病にも使用しやすい製品です。
(B)-1 中鎖脂肪酸製品(MCT:マクトン)
中鎖脂肪酸は小腸から門脈を経由して直接肝臓へ入り、すぐにエネルギーとして分解するため、体脂肪にならずに、エネルギー代謝の効率が良い脂肪酸でMCTオイルが該当します。
中鎖脂肪酸製品は通常の油に比べて脂っこさ、胃もたれ感、消化不良傾向が小さく、食べやすい製品で、液体タイプと、粉末タイプがあります。
B)-2 低甘味ブドウ糖重合体製品
砂糖と同じエネルギーですが、甘みを砂糖の1/3から1/8に抑えている甘味料の為、砂糖と同じ甘さにするには砂糖の3~8倍量使用する事が可能なためエネルギーを摂取できます。ただ、単糖類のため血糖値を急激に上昇させるので、糖尿病の方は使用する時は少量にしましょう。飲み物、ヨーグルト、煮物、ドレッシングなど砂糖の代わりに利用します。