CKD患者さんと運動習慣

CKD患者さんと運動習慣

2021.12.20腎臓内科

原泌尿器科病院 腎臓病療養指導士
看護師 藤山 千代

以前は、慢性腎不全と診断されると腎臓の機能を悪化させないために安静にすることが治療のひとつでした。しかし、慢性腎臓病(CKD:chronic kidney disease)の概念により、近年は運動を控えて長期間安静により行動が制限されることによって、日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)が低下することがわかってきました。過剰な安静は、体力の低下や、インスリンに対する抵抗性や心血管系合併症の増加など、逆にCKDの進行を早めるリスクが生じることがわかり、CKD患者さんも適度な運動をすることが推奨されています。

運動には以下のような効果が期待されます。

  • 過剰な運動制限による体力の低下や、たんぱく制限食に伴う骨格筋の減少を防ぐ
  • 高血圧症や糖尿病、脂質異常症、肥満などを改善する
  • 心・血管疾患の予防、循環器系(心・血管)の機能を改善し疾患発症を予防する
  • CKD患者の腎機能がいま以上に悪化しないように温存する

運動習慣がない場合に比べて、運動習慣がある場合は死亡率が低くなることや、血液透析が必要になる時期を遅らせることができるということがわかっています。

CKD患者さんに推奨される運動

  • 有酸素運動 3〜5日/週
    速足でのウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳、エアロバイク、ラジオ体操など
    持続的運動で20〜60分(万歩計を使用した場合 6000〜1万歩)/日
    または、3〜5分の間欠的運動で計20〜60分/日
  • レジスタンス運動 2〜3回/週
    スクワットや腹筋、腕立て伏せなどの筋力トレーニング
    10〜15回反復で1セットを1〜3セット
  • 柔軟体操 健常成人と同様の内容
CKD患者さんに推奨される運動

日本腎臓病リハビリテーション学会(編):腎臓病リハビリテーションガイドより抜粋

運動するときに気を付けること

  • 人と話しながら続ける強さの運動で、運動中や終了後に息苦しさや痛みを感じないようにする
    (楽であるが、ややきついと感じる程度の運動が望ましい)
  • 最初から頑張り過ぎないで自分の体調に合わせてマイペースに運動する
  • 体調の悪い時は、無理をせずに休むようにする
  • 頭痛、胸痛、冷や汗、脱力感などがあれば、直ちに運動をやめて主治医に相談する
  • 運動中や運動後には、水分補給をする(汗をかいた時は、スポーツ飲料やイオン飲料水を飲む)
  • 栄養や睡眠を十分にとる


適度な運動は骨形成を活発にします。運動を継続することが大切です。また、日光の紫外線を浴びること(日光浴)が、ビタミンDの形成に効果的です。ビタミンDは、骨を強くしたり、筋肉の合成を促したり、免疫機能の調節をしています。木漏れ日程度の日差しの中、ウォーキングすると良いでしょう。

CKDの患者さんは、進行の度合いや症状はさまざまです。どの程度の運動が可能か、医師に相談のうえご自身の体力に合わせて無理のない範囲で運動しましょう。

日常生活に運動を取り入れ、長く続けるコツ

  • エレベーターやエスカレーターはなるべく使わず階段を使用する
  • バス停や駅を1つ手前で降りて歩く
  • 高層階なら行先の階より2〜3階手前で降りて階段で上がる


CKDにおける薬物療法と食事療法、運動を日常生活にうまく合わせて、長く続けることができるように習慣づけましょう。
診察室では、聞けなかったことやもう一度質問したいことなど、看護師に気軽にご相談ください。

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