診療について
原泌尿器科病院 腎透析科 谷口 朋
原泌尿器科病院で腎臓内科及び透析管理を行っている谷口です。当院では腎臓内科外来にて慢性腎臓病患者様の外来加療を行っております。外来加療では食事療法や内服加療を主に行っております。慢性に経過した腎機能低下は、不可逆性で改善しないことが多いといわれています。しかし、食事療法や内服加療により腎機能を維持することは可能です。
日常生活に支障が出ない程度で腎機能を維持出来ている方も沢山おられます。
ところが残念なことに、元々の疾患や腎機能低下の速度によっては、透析になってしまうこともあります。
気付かないうちに、慢性腎臓病になってしまうことを防ぐために、慢性腎臓病について説明していきます。
蛋白尿などの腎臓の障害もしくは腎機能低下が3ヶ月以上持続する状態です。蛋白尿は尿 検査で、腎機能低下は主に採血で診断されます。腎機能低下の指標として一般的なのは糸球体濾過量(eGFR)という値です。このeGFRは90ml/min以上が正常とされ、60ml/min未満を腎機能低下と規定しています。
慢性腎臓病が進むといくつか症状が出てきます。主な症状は浮腫み、倦怠感、食欲不振などです。腎機能がさらに悪化してくると、呼吸苦や動悸を認めることもあります。
慢性腎臓病の主な原因疾患としては、腎臓そのものが原因である慢性糸球体腎炎(尿を作る糸球体という部分の炎症)や多発性嚢胞腎(腎臓に嚢胞が多発することで正常な腎臓組織が減少する)、低形成腎(先天的な腎臓の低形成)等があります。腎臓そのものが原因でないものには、糖尿病や高血圧症といった生活習慣病や、膠原病、尿路結石等があります。
慢性腎臓病の治療は慢性腎臓病のステージや原因となる疾患によって異なります。
・腎機能低下が軽度
慢性糸球体腎炎はいくつか型があり、多少違いがありますがステロイド治療や免疫抑制療法が治療の中心となります。
多発性嚢胞腎に関しては、場合によっては薬剤の投与で嚢胞の増大を抑制することが可能です。
腎臓そのものが原因ではない場合には原疾患の治療が優先となります。糖尿病では血糖コントロール、高血圧症では血圧のコントロールが重要です。
・ 腎機能低下が高度
原因疾患に関わらず、食事療法と対症療法が治療の中心となります。根本的な治療ではないため、腎機能の維持が治療の目標となります。
腎機能低下により腎臓が十分に働かなくなると、体に余分な水分や老廃物が溜まってきます。尿を増やす薬や余分な血液中のカリウムを増加させない薬を投与します。その他、腎機能低下による貧血や骨粗鬆症にも薬剤投与を行います。
上記の薬剤投与に加え、出来るだけ老廃物や水分を増やさないように食事療法も行っていきます。
これらの治療を行っても腎機能低下が進行する場合には透析療法を行っていきます。血液透析療法は一般的には週3回、1回4時間で1週間分の老廃物や水分を除去する治療法です。腎臓の機能を良くする治療法ではなく、腎臓の替わりに機械を使って行う治療法です。
当院では、慢性腎臓病患者様の外来加療を行っております。内服での加療や栄養療法をメインに行っており、血液透析が必要な場合には透析導入も行います。透析施設も併設しておりますので導入後も引き続き血液透析をおこなえます。
腎臓は初期段階ではほとんど自覚症状がありません。そのため最初に受診されるのは、尿検査異常や採血での腎機能低下がほとんどです。特に尿検査異常に関しては見落とされたり、放置されることが多いです。早めに受診することで診断や治療開始が早くなり、腎機能を維持できる可能性も高くなります。健診結果や他院で異常を指摘された場合には早めに受診して下さい。