診療について
HDFとは「血液透析濾過療法」の略称で、拡散の原理で尿素窒素やリン等の小分子と言われる尿毒素物質の除去を得意とする血液透析(HD)と濾過の原理でβ2ミクログロブリン(分子量11,800)や更に大きいα1ミクログロブリン(分子量33,000)などの中分子尿毒素物質の除去を得意とする血液濾過(HF)という異なった原理での治療法を組み合わせて行う事で小~中分子の幅広い種類の尿毒素を除去する事を可能とした治療法です。つまり、HDFは、HDとHFのそれぞれの長所を取り入れ、短所を補い合った治療法とも言えます。
【補足】β2ミクログロブリンは、蓄積することで手根管症候群や多関節痛などの透析アミロイド症を引き起こします。また、β2ミクログロブリンより更に大きい物質であるα1ミクログロブリンやサイズ領域の中分子物質は、かゆみや肩関節痛、足がムズムズする等の不快症状を呈するレストレスレッグス症候群等の原因物質とされています。
オンラインHDFの一法で、体内に一定周期(間歇的)に少量(1回100~200mL)を補充速度100~200mL/minで補液を行い、次の補液までの間(30分毎)にその分の除水を行う事を繰り返す治療法です。
大量置換のオンラインHDFとは異なり、尿毒素物質の除去効率向上よりも循環動態安定化による血圧の急激な低下予防や末梢動脈循環の改善が大きな効果として挙げられます。また、アルブミン漏出が少ないので低栄養や高齢者の方に合った治療法とも言えます。
当院では、IHDF治療に於いて患者さん個々に合わせた最適な補液方法を日々検討・調整し、透析中の血圧低下や倦怠感を軽減させるべく、循環動態の更なる安定を目指すと共に、より快適に治療を受けて頂けますよう努めております。
参考文献
・透析ケア.28(10),2022,メディカ出版
・クリニカルエンジニアリング.34(5),2023,Gakken
・臨床透析.39(5),2023,日本メディカルセンター
・加藤明彦:いまさら訊けない!オンラインHDFの使い方、考えかた,2018,中外医学社