診療について
薬剤部 薬剤師 黒田 沙彩
前立腺は加齢とともに男性ホルモンの影響を受けて肥大していきます。前立腺が肥大することによって排尿困難や頻尿などの症状が現れます。症状に合わせ前立腺肥大症治療薬や過活動膀胱治療薬を使用します。
今回は前立腺肥大症に用いられる薬について紹介していきます。
→ハルナール(タムスロシン)、ユリーフ(シロドシン)、フリバス(ナフトピジル)
交感神経が刺激されると前立腺や尿道の筋肉が緊張し尿道が狭くなり、おしっこが出にくくなりますがα1受容体遮断薬は交感神経にあるα1受容体を遮断することで尿道を緩め、おしっこを出しやすくします。
これらの薬は前立腺肥大症による排尿障害の第一選択薬として用いられます。
服用回数は1日1回や2回など個々の症状に合わせ使い分けられます。
副作用には射精障害や下痢、血圧低下、めまい、ふらつきなどがあります。
α1受容体は血管にも作用し、血圧低下を引き起こす場合があるため、降圧剤を多数服用 している方は注意が必要です。
→ザルティア(タダラフィル)
前立腺や尿道の筋肉を緩めることでおしっこを出しやすくする働きがあり、服用回数は 1日1回のみの薬です。
副作用には血圧低下やほてり、頭痛、などがあります。
ザルティアもα1受容体遮断薬同様に血管にも作用し、血圧低下を引き起こす場合があるため、降圧剤を多数服用している方は注意が必要です。 また、硝酸剤(硝酸イソソルビド、ニトログリセリン、ニコランジルなど)と併用すると過度に血圧が低下するため一緒に服用できません。
→アボルブ(デュタステリド)
アボルブは 5α-還元酵素を阻害することで男性ホルモンの働きを弱め、前立腺を小さくして尿道の圧迫を緩める働きがあり、服用回数は1日1回のみの薬です。
副作用には男性ホルモンの働きを弱めるため勃起不全や性欲減退といった性機能障害が起こることがあります。 アボルブは皮膚からも吸収されるため女性や子供直接薬に触れないように注意が必要です。
もし、触れてしまった場合は直ちに石鹸で洗い流してください。
→プロスタール(クロルマジノン)
男性ホルモンのアンドロゲンの働きを抑えて前立腺を小さくすることで前立腺肥大症に伴う症状を改善し、服用回数は1日2回です。
副作用には性欲低下、勃起不全、射精障害などがあります。
また、重篤な肝機能障害を引き起こすこともあるため開始後3ヶ月は少なくとも1ヶ月に1回、それ以降も定期的に肝機能検査が必要です。
→八味地黄丸、牛車腎気丸
前立腺肥大症による排尿障害の改善に用いられ、服用回数は1日3回 食前または食間です。
漢方薬は体質によるので必ずしも効果が得られるとは限らず、効果発現まで時間を要することもあります。
しかし、副作用は比較的少ない薬です。
→セルニルトン(セルニチンポーレンエキス)
エビプロスタット(メガソウエキス、ハコヤナギエキス、セイヨウオキナグサエキス、スギナエキス、精製小麦胚芽油)
前立腺肥大症による排尿困難、頻尿、また、前立腺の炎症改善に用いられ、服用回数は 1日3回です。漢方薬同様に副作用は比較的少ない薬です。
前立腺肥大症の方は風邪薬や抗アレルギー薬、抗不安薬、抗不整脈薬などが原因でおしっこが出なくなることがあります。医療機関を受診する際は必ずお薬手帳を持参し、医師・薬剤師に服用している薬の内容を伝えてください。 また、市販薬を購入する際も同様に薬剤師に相談してください