膀胱炎について

2022.08.04泌尿器科

原泌尿器科病院 薬剤部 腎臓病療養指導士 逸見 由紀子

膀胱炎は、一般的な感染症でありその多くは細菌が尿道を遡って膀胱に入り、膀胱内で増殖することによって生じます。
原因となる細菌の約8割が大腸菌です。
大腸菌は大腸に住み着いている常在菌で、便に含まれるほか、肛門の周囲にもいます。
特に男性より女性が膀胱炎になりやすいのは、女性は肛門から尿道までの距離が短く尿道の長さも短いため、細菌が膀胱内に侵入しやすいからです。
女性にとっては非常にポピュラーな病気で、“誰でも”かかる可能性があります。

1.症状

排尿時の痛み、頻尿、残尿感、下腹部痛、血尿、尿の混濁、発熱、排尿時の違和感などがあります。

2.原因

膀胱炎は膀胱内の大腸菌を始めとする細菌が侵入し、増殖することが原因で発症します。
しかし、膀胱に細菌が入ってしまったからといって即座に膀胱炎になるとは限りません。
体が健康な状態であれば、細菌が侵入したとしても、体の持つ抵抗力で増殖が抑えられます。
しかし睡眠不足や精神的ストレス・疲労などによって抵抗力が弱まっていると、侵入してきた細菌が増殖しやすくなり、膀胱炎が発症します。
このほか、月経の前後や性行為など、陰部に細菌が増殖しやすい状態にあるときも、膀胱炎に感染しやすくなります。

3.検査

臨床症状から膀胱炎を疑った場合、検尿を行います。
尿の中に白血球や赤血球が正常より多く出ていないか調べます。
同時に尿の培養の検査をおこない、どんな細菌が原因か調べます。
培養の結果が出るまでには5~7日間かかります。
最近では大腸菌でも、膀胱炎によく使われる抗菌薬に抵抗性を持つもの(耐性菌)が出現することがあります。
そのため同時に「薬剤感受性検査」を行います。
「薬剤感受性検査」とは抗生物質に対する細菌の感受性を調べるために行われる検査です。
簡単に言うと細菌に対してどの薬が効くか、効かないかを確認するための検査です。
この場合適切な尿検体を採取することが培養検査の上で重要となり、清潔に中間尿を採取していただきます。

4.治療

基本的に膀胱炎は菌に感染したことが原因で発症するため、抗生物質などの抗菌薬の投与が主な治療方法になります。
抗菌薬の服用を始めて、早ければ1~2日で症状が治まります。
治療期間は5~7日程度で、抗菌薬を変更した場合でも2週間程度で治ることがほとんどです。
症状が改善しない場合は、複雑性膀胱炎や膀胱炎以外の病気の可能性もあるため、再度検査をおすすめします。
ただし抗菌薬服用に関する注意点があります。
以下に代表的な注意点を紹介するので、抗菌薬を飲むときの参考にしてください。

#抗菌薬を飲むのを忘れた!
抗菌薬の服用を忘れた場合は、気づいた段階で出来るだけ早く服用しましょう。
ただし、次の服用のタイミングまでにほとんど時間がない場合は、飲み忘れた分は飛ばして、普段の服用のスケジュールを守るようにしましょう。
飲み忘れた分を補うために、一度に2倍の量をとらないようにしてください。
処方された量の2倍摂取すると副作用が起きる可能性が高まるからです。

#謝って2倍量の抗菌薬を飲んでしまった!

間違って2倍の量を飲んでしまった場合には、胃の痛み、下痢、吐き気や嘔吐などの副作用が起きることもありますが、一般的には深刻な副作用は起こらないことが多いです。
ですが、副作用が重症化した場合にはすぐに病院に行きましょう。

#症状が軽くなったし、薬の量を減らしてもいいよね?

勝手に薬の量を減らしてしまうと、血液中の抗菌薬の濃度が低すぎる状態になってしまいます。
薬の濃度が低いので細菌が完全に死滅せず、病原菌が抗菌薬に徐々に慣れてしまいます。この状態を続けることによって、細菌が耐性を獲得しやすい環境を整えてしまいます。
治療が終わらないうちに、抗菌薬を減らしたり中止したりすると、きちんと治らず感染症をぶり返してしまう恐れが高まります。
したがって、完全に体内から原因となった細菌がいなくなるまで、きちんと服用する必要があります。

#次に膀胱炎になったときに、お薬を残しておいてもいい?

抗菌薬を残しておいていつか使おうと考えるのは一見合理的に感じられるかもしれません。
しかし、その抗菌薬が次も効くとは限りません。
思わぬ副作用が出る危険性があります。
保管状況による変化も心配です。
抗菌薬は取っておかないようにしましょう。

5.予防

膀胱炎を予防するには、2つの鉄則があります。ひとつは「細菌を侵入させない」、もう一つは「細菌を繁殖させない」です。

①細菌を侵入させない

・排便後は菌が入らないよう、前から後ろに拭く
・ナプキンやおりものシートはこまめに取り換えて清潔を保つ
・尿意を感じたら我慢せず、こまめに排尿する

トイレの温水洗浄機能を使って清潔にするのもひとつの方法ですが、過度にすると刺激から逆にバリア機能が落ちてしまうこともあるので、ほどほどにしておくのが良いようです。

②細菌を繁殖させない

・栄養バランスのとれた食事、休息、睡眠をとる
・軽い運動、お風呂などで体を温める
・水分を十分とる
疲労がたまっていたり、体が冷えていると体の免疫力が落ち、膀胱炎にかかりやすくなります。
疲れたら無理をせず、栄養と休息を取って体を休め、疲労回復に務めましょう。
また暑い時期にはエアコンによる冷えや冷たいものの食べすぎに気を付けること、寒い季節には服装やカイロなどでお腹を冷やさないことも、膀胱炎の予防に役立ちます。

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