尿路結石の予防について

尿路結石の予防について

2022.04.11泌尿器科

原泌尿器科病院 泌尿器科医 冨永 浩紀

日本で尿路結石に悩んでいる人がどの程度いるか皆さんご存じでしょうか?
少し古くはなりますが、2005年の全国調査で生涯に尿路結石にかかる人は、男性で15.1%、女性で6.8%います。
つまり、男性では7人に1人、女性では15人に1人の割合で罹患することとなります。
さらに、年々結石に悩まされる方は増えていて1965年の調査と比較するとその数は約3倍にも膨れ上がっています。
それでは、尿路結石はなぜこんなにも増えてきているのでしょうか?
尿路結石は様々な要因が重なり合って発症するものですが、実は食事や運動といった生活習慣が大きくかかわっていて、「尿路結石はメタボリックシンドロームの1疾患である」という概念が提唱されるようになってきています。
そこで、今回は「水分の多量摂取」「肥満の防止」「食生活の改善」の3つの観点から尿路結石予防のお話をしたいと思います。

①水分の多量摂取

水分を多く摂取し、尿量を増加させることは結石の種類や発生原因の如何を問わず、尿路結石予防の基本とされています。
また、逆もしかりで、慢性的な脱水状態や水分摂取不足では尿路結石が発生しやすくなります。
具体的な目標値は、1日尿量を2000ml以上にするために1日水分量を2500~3000ml
に設定しましょう。

②肥満の防止

男性結石患者の40.3%に肥満(BMI>25%)を認めておりこの肥満度はどの年代でも一般層を凌駕していました。
また、高血圧、糖尿病、高脂血症の合併率が肥満患者で 明らかに高い結果となりました。
これらの要因として、食生活の欧米化が指摘されています。 暴飲暴食をせず適度な運動を心掛けましょう。

②肥満の防止

③食生活の改善

これは、①、②にも深く関わってきますが、今回は結石の成分で一番多い「シュウ酸カルシウム結石」の予防についてお話します。この予防で大事なことは、シュウ酸を多く含む食品を頭にいれておくことです。具体的には、葉菜類の野菜、タケノコ、紅茶、コーヒー、お茶(玉露、抹茶)、バナナ、チョコレート、ピーナッツ、アーモンドがあげられます。
③食生活の改善

ただし、これらの食品も工夫ひとつで尿中に排出されるシュウ酸の量を大幅に減少させることができます。まずは、カルシウムを同時に摂取することです。カルシウムを同時に摂取すると、腸内でシュウ酸とカルシウムが結合し便として排出されるため、尿中のシュウ酸量が減少します。逆に脂肪分を多く含む食品は、腸内で脂肪酸とカルシウムが結合し、シュウ酸と結合すべきカルシウムが減少してしまい、尿中へのシュウ酸排出が増加してしまうため注意しましょう。

つぎに調理法で有用なのは「茹でる」ことです。シュウ酸は水溶性なので茹でることで減らすことができます。例えば、ホウレンソウだと3分間茹でることでシュウ酸は40%近く除去され、おひたしにすると50%喪失するとの報告があります。
「尿路結石発作」の症状は決して甘いものではなく、強い疼痛、嘔気に襲われます。
1度ご経験された方は、痛いほどに身に染みていることだと思います。
さらに、尿路結石の再発率は高く、3年で30%、5年で約50%、10年で80%とされています。
結石を患った方の経過観察方法としては、尿路結石発症が初回・単発の方は必要ございませんが、腎結石が残っている方は3~6か月の通院、腎結石がない方も5年程度は半年~1年毎の通院を行い、超音波検査、尿検査、腹部写真の撮影が推奨されています。
また、再発期間が短い方や再発を繰り返す方には、24時間蓄尿という検査で尿中に結石ができやすい因子がないかを確認することもできます。
痛みなどの自覚症状がないために治療を中断してしまう患者さんもいらっしゃいますが、尿路結石で腎機能が悪化すること、重度な感染症を引き起こすこともまれではありません。
通院すると結石ができにくくなる報告もあります。これはstone clinic effectと呼ばれており、再発予防に非常に効果的と言われています。


いかがでしたでしょうか。
上に記したことが一人でも多くの方のお役に立てれば幸いです。

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