診療について
尿管ステントの対処法
原泌尿器科病院 診療部長 山道 深
梅雨明けが近く、尿路結石の頻度が多くなる暑い夏をむかえようとしています。皆さん、こんにちは!!原泌尿器科病院の診療部長の山道です。今回は、尿路結石治療において、関連が深い「尿管ステントの症状とその対処方法」についてお話ししたいと思います。
尿管ステントは腎臓と膀胱をつなぐ尿管という細い通り道にバイパスとして入れる管のことです。これを挿入する目的には以下のような3つの理由があります。
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尿路結石のうち、尿管内に結石が詰まり、腎臓内に尿が溜まってしまう水腎症という状態を改善することで、あなたの腎機能を守り、かつ痛みを改善するために行います。
水腎症の状態で腎臓に溜まった尿に細菌が感染し腎盂腎炎を引き起こします。時に非常に重篤な状態になるため、細菌に汚染された尿を腎臓から流れるようにするために行います。
尿路結石内視鏡手術の成功率向上、術中・術後の合併症軽減のために手術前に計画的にいれることもあります。
ただし、あなたの治療において必要とは言うものの、ヒトの体にとっては異物が挿入されるため様々な症状が出る場合があります。主な症状とその対処法について解説します。
尿管ステントの一部が膀胱粘膜をこすることで起こります。そのため日常生活で活動することにより、血尿が濃くなることが多く経験されます。一見濃い血尿でも水分を普段より多めに摂取する、少し安静を保つなどでほとんどが薄くなります。水分摂取が一番の対処方法になりますが、水分を多く摂取しても血尿が濃くなり更に尿が出なくなった場合は、受診していただくことになります。下記に示すグレードスケールでG4からG5程度になればお電話でご連絡ください。適切な対応方法をお伝えいたします。
程度は様々ですが膀胱炎に似た症状が尿管ステントの一部が膀胱粘膜を刺激することで起こります。こちらの対処方法は鎮痛剤が効果を示す事が多く、鎮痛剤の中でも坐薬が有効です。通常は2~4日で症状は軽減していきます。但し、異物が挿入されているので、少し症状が残ることがあります。その他、前立腺肥大症で使用するα1遮断薬、過活動膀胱で使用する抗コリン剤というお薬が有効なこともあります。
排尿後の腰痛が起こることがあります。本来人間の体は、排尿をする時、尿が腎臓に逆流しない仕組みになっていますが、尿管ステントが挿入されることで逆流防止機構が働かなくなり、一部の尿が腎臓に逆流します。それにより腎臓の圧力が上がり、腰痛を認めます。尿管ステントを抜けば改善しますが、尿管ステントが挿入されている間は、鎮痛剤での対処となります。
最も気を付けるべき症状は38度以上の発熱です。これは尿管ステントが閉塞、または尿の逆流により腎盂腎炎を引き起こしている可能性があります。稀に重症化することもあり入院加療が必要なこともあります。そのため、尿管ステントを挿入している間はご自身の体温に注意してください。38度以上の発熱を認めた場合は我慢せず、いつでも連絡し受診するようにしてください。
以上、尿管ステント症状とその対処方法についてお話いたしました。このように患者さんにとって尿管ステントは良い面と悪い面を持っています。当院ではこの悪い面をできるだけ軽減する工夫を日々考え実践しています。当院では専門病院というメリットを活かして、他院では行わないような工夫を患者さんに可能な限りプラスになるように医師は努めて参ります。もし、不安な点、疑問に思う点などがありましたら、いつでもスタッフにお声掛けください。