病院のご案内
Rezūmシステムは、前立腺肥大症の手術方法の1つで、内視鏡を用いて尿道から入り(経尿道的)、水蒸気を利用して前立腺肥大症を治療する医療機器です。水蒸気が、肥大した組織内に蔓延し、細胞を壊し、その細胞が体内に自然に吸収されていくことで、前立腺肥大症に伴う症状を緩和します。この経尿道的水蒸気治療(以下、本治療)は、前立腺肥大症を低侵襲に治療する、新しい手術療法です。日本では行政の承認を2021年10月13日付けで取得しましたが、欧米では5年以上の実績があり、治療が安全に進められること、また治療の効果があることが、示されています。
この治療方法は、尿道括約筋インプラントをご使用の患者様、陰茎プロテーゼの治療歴がある患者様、尿路感染が起きている最中の患者様、治療時に視野を妨げるほどの著名な血尿が見られる患者様には、ご使用頂けない治療方法です。
なお、Rezūmシステムは図1です。このうち、デリバリーデバイスの細長い筒状の部分が、患者様の体内に入る部分になります。
本治療は、麻酔をして施行するものです。海外では局所麻酔、腰椎麻酔、全身麻酔など様々な方法で実施されています。日本でも、必要に応じた麻酔の方法が主治医の先生方の判断により考慮されます。
適切な麻酔をした後、デリバリーデバイスを患者様の尿道より入れます。デリバリーデバイスの先端からは水蒸気を送り出す針が出るようになっており、内視鏡で確認しながら適切なところで針を前立腺の肥大した組織に直接差し込み、水蒸気を注入します。水蒸気は、前立腺組織の間質と呼ばれる、スペースの部分を伝って充満します。水蒸気は約103℃ですが、前立腺は体温と同じですので、水蒸気が前立腺細胞に触れて温度が下がることで、水蒸気治療を行った部分が約70℃になります。この過程で治療部分の前立腺細胞は破壊され、その後約1~3か月かけて自然に体内に吸収されていきます。こうして、肥大していた前立腺が小さくなり、前立腺肥大症からくる下部尿路症状が緩和されます。治療方法を簡単に示すと図2のステップになります。この治療は、側葉肥大に対しても、中葉肥大に対しても行うことができます。
この治療は、水蒸気により前立腺組織の治療部分の温度を上げます。組織は温度が上がると浮腫(腫れ)を起こします。この浮腫は一時的なものですが、腫れている間に尿閉にならないために、本治療後は一定期間、尿道カテーテルの留置が主治医の先生により検討されます。なお、米国で行われた本治療の臨床試験では、本治療を行った患者様の約9割で治療後に尿道カテーテルが留置されました。また、留置期間の平均は3.4日間、範囲は1.0 - 30.9日間でした。
排尿障害、血尿(肉眼で分かるもの)、血精液症(精液に血が混じること)、頻尿、尿意切迫などが報告されています。軽度なものまで含めても、排尿障害が約17%、血尿が約11%、それ以外は10%以下と報告されています。
有害事象 | 被験機器関連 | 手技関連 |
---|---|---|
排尿障害 | 16.90% | 16.90% |
血尿(肉眼的) | 11.00% | 11.00% |
血精液症 | 7.40% | 7.40% |
頻尿 | 5.90% | 5.90% |
尿意切迫 | 5.90% | 5.90% |
尿路感染(疑い) | 2.90% | 3.70% |
尿閉 | 4.40% | 4.40% |
無射精 | 2.90% | 2.90% |
勃起不全(悪化) | 1.50% | 2.20% |
射精量減少(逆行性射精) | 2.90% | 2.90% |
精巣上体炎 | 2.90% | 2.90% |
尿道狭窄 | 2.20% | 2.20% |
前立腺炎 | 2.20% | 2.20% |
排尿後尿滴下 | 2.20% | 1.50% |
※ 発現率2.0%以上の有害事象を記載
前立腺肥大症の手術には、肥大した組織を下腹部を開いて切除するもの、内視鏡を用いて尿道から入り、電気メスやレーザーを用いて取り除くもの、また肥大組織を尿道側から寄せて留めるものなど、様々な方法があります。内視鏡を用いて尿道から入り、電気メスやレーザーで肥大した前立腺組織を取り除く治療は、術後の効果は高いですが、水蒸気治療と比べて出血などの合併症率が高い、手術時間が長いなどの特徴があります。また、肥大組織を尿道側から寄せて留めるものは、効果の即効性はありますが、異物を体内に留置するため再手術率が高いという特徴があります。それぞれの治療方法にはそれぞれにメリット、デメリットがあり、患者様の症状、既往歴や全身の状態、そしてご希望などをもとに、主治医の先生方が選択肢を検討されます。
以下の症状が現れた場合はすぐに医療機関にご連絡下さい。